6月12日、「市民電力連絡会」が「適格機関投資家等特例業務に関する意見書」を金融庁に提出しました。その前文と3点の要望を転載させていただきます。
- 私たちは比較的小規模な再生可能エネルギー事業を行っている事業者やNPOが集まって形成した団体です。このたび5月14日に「適格機関投資家等特例業務」(以下「特例業務」と呼ぶ。)に関する規制強化が発表されましたので、これに対する私たちの意見を申し述べます。
私たちはこの制度を活用して一般市民から資金を集め、小規模ながら多数の市民発電所を作る事業を計画しております。全国各地に、このような事業の担い手がおり、一つは小規模であっても合計すると数十万kWの規模に達するような事業となります。
しかし1件あたりが小規模な事業の資金調達手段は、日本においては非常に少なく、私たちのような事業の最大のネックとなっています。その中で「特例業務」による資金調達の道は、私たちには大きな希望の光となっておりました。実際にいくつかの事業者は、この手法による適切な出資募集活動を行うため、専門家による支援を頂く準備も進めていましたが、この度の強化策により、このような事業者が「特例業務」を活用することはほぼ不可能になります。
具体的には、規制案の中にある「勧誘の相手方となる個人を金融資産1億円以上の人に限定する」という部分は、一般市民からの出資の道を完全に閉ざすものと言えます。私たちは、健全で意欲的な市民の手による地域再生可能エネルギー事業(以下「市民出資ファンド事業」と呼ぶ。)の芽をさらに伸ばし、これを保護・育成し発展させるため、下記の通り「市民出資ファンド事業」に対する「特例措置」の実施および規制強化の再検討を求めます。
記
1、 規制強化の対象から「市民出資ファンド」を除外してください。
2、「特例業務」を使った詐欺等の消費者被害防止策として、悪徳業者への罰則 強化を
3、この規制強化の政令の施行日を、少なくとも平成26年度末まで延期していただきたい。
1、 今回の規制強化は「特例業務」を使って詐欺行為等を行う悪徳業者がはびこっていることが理由であると思います。そうであれば、「悪徳業者の排除」の仕組みによって、善良な「市民出資ファンド」が排除されることのないよう対策がとられるべきです。 実際に、規制の除外対象として、すでに下記の二つが上げられています。
イ 出資者全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利(有限責任事業組合が典型)
ロ 出資者がその出資または拠出の額を超えて収益の配当または出資対象事業に係る財産の分配を受けることができないことを内容とする当該出資者の権利(無配の出資)
これに以下の項目を追加してくださるよう要望します。
ハ 「市民出資ファンド」等と認められる、以下の条件を満たす出資対象事業の出資者の権利 「適格機関投資家」のうち、いわゆる「金融機関」(預金取扱金融機関等)または金融機関が一定比率以上の出資をした投資事業有限責任組合であること。
2、「特例業務」を使った詐欺等の消費者被害防止策として、悪徳業者への罰則強化を 投資判断能力は、「金融資産の額」で決まるとは思えません。金融資産が1億円未満の一般投資家でも、対象事業についての適切な説明が行われるならば、十分に投資判断ができるのではないでしょうか。このたびの規制強化策は、一般投資家の健全なファンドへの投資機会を奪うこととなり、社会的な損失も大きいと考えます。詐欺等の防止のためには、健全なファンドと悪質なファンドとの峻別こそが必要です。①悪質な特例ファンドへの罰則強化、②悪質ファンドに協力している適格機関投資家の排除、③預金取扱金融機関が適格機関投資家として関与していることを条件とする等の対策こそが求められます。
3、この規制強化の政令の施行日を、少なくとも平成26年度末まで延期していただきたい。 再生可能エネルギー事業の場合、事業計画ができ事業会社が立ちあがっていても、さらに電力会社との系統連系協議や設備業者からの納入の遅れなど、事業者側では解決できないものがあります。
すでに事業開始に向け出資募集の準備をしている団体もありますが、上記の事情により、そもそも募集行為を7月31日までには開始できないかも知れません。また、開始できても7月31日までに満額を集めきることはおそらく不可能です。
ここまで準備してきた事業が順調に開始できますよう、少なくとも募集開始日または規制案公表日から起算して8ヶ月間は自己募集ができるよう経過措置を認めていただくよう求めます。
以上、よろしくお願い申し上げます。