一般社団法人 ソーシャルファイナンス支援センター

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6月12日、NPO法人「こだいらソーラー」が「適格機関投資家等特例業務の見直しに係る政令・内閣府令案等に関する意見」を金融庁に提出しました。以下に「意見要旨」と「理由」を転載させていただきます。

【意見要旨】
 今般の政令・内閣府令案による適格機関投資家等特例業務の規制強化は、これを活用した健全な市民ファンドの募集を阻害することとなり、また資産を相当に保有する一部の個人投資家を除く一般の個人投資家にとっても、健全なファンドへの投資の機会を奪うこととなるため、導入には賛成できません。
 悪徳業者の排除、消費者保護のための施策は必要ですが、健全な市民ファンドを規制の対象からはずすなどの方策を講じてください。
少なくとも、現在、資金募集を準備中の市民事業の資金調達がストップすることがないよう、施行期日を延期する、経過措置を講じるなどの対策をとってください。

【理由】
 私は、地球温暖化防止のため、原発にたよらない地域分散型のエネルギーの創出に市民自ら参加する取り組みをすすめるため、2013年2月、仲間とともにNPOを立上げ、大勢の市民の資金拠出により、太陽光市民共同発電所を開設しました。現在2号機の設置に向けて、市民参加のプロジェクトを設け取り組んでおり、資金をつくるため、「適格機関投資家等特例業務」(以下「特例業務」)を活用することを検討しておりました。

 私たちばかりでなく、創エネ事業の担い手の多様化の流れを踏まえ、全国多くの市民団体が一般市民から資金を集め、地域に根差した小規模な市民発電所を作る事業に取り組んでおり、ノウハウの共有化のための情報交換のネットワークも形成しております。それら団体のうち、資金集めの方法として、適格機関投資家等特例業務の活用を検討しているグループは少なくありません。この制度が、簡便で募集・運営コストが小さく、事業者自身も勧誘活動ができる等のメリットがあるためです。実際、福井県や山梨県で、特例業務を利用した市民ファンドで資金を集めて自然エネルギー発電所を作った実現事例もあります。

 ところが、このたびの規制強化案では、今後、私たちが「特例業務」を活用することはほぼ不可能になると思います。案の中の「勧誘の相手方となる個人を金融資産1億円以上の人に限定する」という規制が導入されますと、一般市民からの出資の道は完全に閉ざされてしまいます。特例業務を使って詐欺行為を行う悪質な業者をなくすためとのことですが、一部の悪質な業者や無責任な適格機関投資家のせいで、このような規制強化が行われ、適切に募集勧誘を行える事業者がこの制度を利用して簡便・低コストで一般市民から出資を募集できなくなることは、これからの日本社会の発展に欠かせないソーシャルビジネスの発展を阻害し、社会的に大きなマイナスとなります。

  一般投資家を悪徳ファンドの被害から守る消費者保護も目的の一つとされていますが、「金融資産が1億円以上」でなければ投資判断能力がないとの決めつけは、あまりにも失礼であると思います。適切な説明が行われているならば、金融資産1億円未満の個人でも投資する・しないを適切に判断できるのではないでしょうか。規制案は、資産を相当に有する一部の個人投資家を除き、一般個人投資家の特例業務ファンドへの投資の機会を奪うこととなり、市民のお金が健全な事業のために回るしくみにより経済の活性化をめざす上でもデメリットが大きいと考えます。

 詐欺の防止のためには、健全なファンドと悪質なファンドとの峻別こそが必要です。悪質な特例ファンドへの罰則強化、悪質ファンドに協力している適格機関投資家の排除、預金取扱金融機関が適格機関投資家として関与していることを条件とする等の抜本的法改正こそが求められていると考えます。

 抜本的改正まで待てず、すぐにでも消費者保護のための規制強化を導入するということであれば、この規制強化によって、健全なファンドを駆逐してしまうことのないよう、市民ファンドを規制の対象から除外する方策を講じてくだい。市民の手による地域再生可能エネルギー事業の保護・育成とさらなる発展のため、事業の実施のために不可欠な市民ファンドに対する「特例措置」の実施および規制強化の再検討を求めます。

  少なくとも、市民事業が準備してきた特例業務が順調に開始できるよう、規制強化の政令の施行日を、今年度末まで延期すること、すでに事業開始に向け出資募集の準備をしている団体が募集を終了するまでは募集および運用の継続を可能とする経過措置を講じることを要望いたします。

 また、今後の課題として、投資家保護に留意しつつ、市民ファンドを簡便に設立できるようにすることで、市民ファンドによる資金調達を容易にし、もってソーシャルビジネスの発展に寄与する制度の創設、関係法令の改正等が必要と考えます。

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